堤防からクエは釣れる!ポイント選びと釣り方

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はじめに:なぜ、あえて「堤防」からクエを狙うのか

釣り場は堤防のみ。磯にも船にも頼りません。

私が追い求めるのは、堤防という限られた条件の中で、いかにして大型のクエを引きずり出すか。ただその一点です。

水深、潮の効き、沈み根の位置、足場の高さ。そして夜の帳が下りたときに生まれる、わずかな変化と一瞬の間合い。それらすべてを頭の中で組み立て、堤防という制約の多いフィールドで大型のクエと真正面から向き合う。これこそが、私が「堤防クエ」に魅せられた理由です。

正直に申し上げて、堤防は簡単な釣り場ではありません。立ち位置は限られ、魚の逃げ場となる根もすぐそこにある。一度掛ければ、主導権は一瞬で魚側に傾きます。だからこそ、仕掛け、誘い、喰わせの間、そして掛けてからのやり取りに至るまで、すべてに明確な理由と再現性が求められるのです。

私は、運に頼らず、長年の経験と観察を積み重ね、堤防ならではのクエの釣り方を研究し続けてきました。派手さよりも理論を。一発大物よりも、計算された一匹を。この記事は、そんな私が堤防という愛すべき舞台で、大型クエを引きずり出すための知識と経験のすべてを記したものです。

常識を疑え!堤防でクエが釣れる3つの理由

「本当に、あの堤防からクエなんて釣れるのか?」多くのアングラーが抱く素朴な疑問でしょう。しかし、答えは明確に「イエス」です。クエが堤防に姿を現すのには、彼らの生態に根差した、しっかりとした理由があるのです。

理由1:堤防はクエにとって格好の「隠れ家」と「餌場」

クエは、岩礁帯に潜む典型的な根魚です。彼らにとって身を隠せる「根」は、生命線ともいえる重要な場所。そして、一見すると人工的に見える堤防やテトラポッドは、クエから見れば複雑な地形を持つ絶好の「人工岩礁」に他なりません。

堤防の基礎部分にある捨て石やケーソンの隙間、びっしりと積まれたテトラポッド帯は、彼らにとって格好の隠れ家となります。さらに、これらの構造物にはカニやエビといった甲殻類が住み着き、アジやイワシなどの小魚が回遊してきます。つまり、堤防はクエにとって安全な住処であると同時に、食料が豊富に集まるレストランでもあるのです。

理由2:夜間、警戒心が薄れたクエは浅場まで回遊する

クエは非常に警戒心が強く、日中は沖の深場や根の奥深くに潜んでいることがほとんどです。しかし、彼らは夜行性。夜の闇がすべてを包む頃、彼らは大胆に行動を開始します。普段は用心深く潜んでいる隠れ家から這い出し、餌を求めて堤防の際などの浅場まで回遊してくるのです。

特に釣り人が少なくなり、海が静寂を取り戻す「深夜」は、大型のクエが最も油断する時間帯。日中には決して近づけないような足元まで、彼らは捕食のためにやってきます。夜釣り、とりわけ夜間の時間帯が堤防クエで有力になりやすいのは、クエが岩影にすみ、夜になると獲物をあさるとされる生態があるためです(参考:全国海水養魚協会の解説)。

理由3:放流や資源増殖の取組が行われている地域もある

「幻の魚」と呼ばれるクエですが、地域によっては資源増殖の取組が行われています。例えば和歌山県の(公財)和歌山県栽培漁業協会では、ヒラメ等とともにクエの種苗生産・放流に取り組んでいることが公表されています。

放流の取組が行われている地域では、沿岸の構造物周りで若い個体が確認される可能性も指摘されています。ただし、放流の規模や定着状況、釣獲機会への影響は地域や年によって差があるため、「必ず増える」「確実に釣れる」とは一概に言えません。堤防からでもクエが狙える可能性はありますが、条件次第で難易度は大きく変わります。

堤防でクエが釣れる3つの理由を解説する図解。隠れ家と餌場になること、夜行性であること、放流事業で個体数が増えていることが示されている。

釣果を大きく左右する「堤防クエ」ポイント選びの思考法

堤防クエ釣りにおいて、ポイント選びは釣果の大部分を決定づける最重要項目です。闇雲に竿を出すのではなく、「なぜここで釣れるのか」という理論に基づいた場所選びが、幻の魚への最短ルートとなります。私が常に実践している3つの着眼点をご紹介しましょう。

第一の着眼点:「外洋の潮」が直接当たる堤防を探せ

まず、大前提として狙うべきは「外洋に面した潮通しの良い堤防」です。湾の内側にあるような、潮の流れが緩やかな場所ではクエとの遭遇率は格段に下がります。

外洋からの力強い潮の流れは、クエの餌となるベイトフィッシュ(アジ、イワシ、キビナゴなど)を運び込みます。そして、その潮が堤防にぶつかることで複雑な流れが生まれ、ベイトが溜まりやすい場所が形成されるのです。活発な潮の流れはクエ自身の活性も高めます。Googleマップの航空写真や、釣り人向けの潮汐・海図アプリなどを活用し、黒潮などの本流が近くを通り、直接潮の影響を受けるであろう堤防をリストアップすることからポイント開拓は始まります。

第二の着眼点:堤防の「地形変化」を読み解く

有望な堤防を見つけたら、次はその中のどこを狙うべきか、というピンスポットの選定に移ります。クエは常に「変化」がある場所に潜んでいます。のっぺりとした平坦な海底ではなく、身を寄せられる何かしらの構造物を好むのです。

  • 堤防の先端部:潮が最もよく通り、深さもある一級ポイントです。
  • ケーソンの継ぎ目:コンクリートブロックの隙間は、クエにとって絶好の隠れ家となります。
  • テトラポッドの切れ目や沖に沈む根:テトラ帯の終わりや、少し沖にある沈み根は、回遊してくるクエが立ち寄る休憩所のような役割を果たします。
  • 足元のカケアガリ:堤防の基礎から海底にかけての傾斜(カケアガリ)は、クエが餌を探して回遊する通り道になります。

日中の明るい時間帯に釣り場を訪れ、偏光グラスを使って海中の地形をよく観察しておくことが、夜間の釣果に直結します。

第三の着眼点:「深夜」の静寂と常夜灯の明暗を味方につける

時間帯、特に「深夜」という要素は、ポイント選びにおいて極めて重要です。日中は多くの釣り人で賑わい、魚へのプレッシャーが高い人気の堤防も、深夜になれば別世界。静寂が訪れると、警戒心の強い大型クエも安心して浅場へ出てきます。

また、堤防にある常夜灯も重要なヒントを与えてくれます。常夜灯の光にはプランクトンや小魚が集まり、それを捕食するために大型魚が寄ってきます。しかし、クエのようなフィッシュイーターは、光のど真ん中ではなく、光が作る「明暗の境目」に潜んで獲物を待ち伏せする習性があります。常夜灯がある場合は、その境目や、光の当たらない暗闇の部分を重点的に狙うのがセオリーです。

夜の堤防でヘッドライトをつけた釣り人が真剣な表情で海を見つめている。常夜灯が海面に明暗のコントラストを生み出している。

堤防クエを獲るためのタックルと仕掛け

堤防というフィールドでクエと対峙するには、それに最適化されたタックルが必要です。磯釣りほど大げさである必要はありませんが、不意の大物にも対応できるパワーは必須。ここでは、私が信頼を置く基本的なタックル構成をご紹介します。これは、船や磯とはまた異なる、堤防クエ釣りのスタイルに特化した考え方です。

竿とリール:石鯛竿からルアーロッド流用まで

本格的に堤防から大型クエを狙うのであれば、やはり石鯛竿や沖縄で使われるタマン竿といった、強靭なバットパワーを持つ竿が理想です。リールは、太いラインを十分に巻けるカウンター付きの両軸リールや、大型のスピニングリール(8000番以上)が適しています。

しかし、「まずは一度挑戦してみたい」という方であれば、お手持ちのタックルを流用することも可能です。MH(ミディアムヘビー)クラス以上のショアジギングロッドや、ヒラスズキ用のパワフルなシーバスロッドでも、小型〜中型クラスのクエであれば対応できます。ただし、その場合はドラグ性能の高いリールを選び、ラインシステムを普段よりワンランク太くするなどの工夫が必要です。

仕掛け:シンプルが最強「捨てオモリ式ぶっこみ仕掛け」

堤防クエ釣りで最も実績が高く、根掛かりのリスクを軽減できるのが「捨てオモリ式ぶっこみ仕掛け」です。構造は非常にシンプルで、トラブルが少ないのが利点です。

  • 道糸:ナイロン20号以上、またはPEラインの6号以上を推奨します。
  • リーダー:道糸がPEの場合は、根ズレに強いナイロンリーダー(80〜100lb)を2〜3m結束します。
  • ハリス:しなやかで根ズレに強いナイロンか、フロロカーボンの30号以上。大物狙いならワイヤーハリスも有効です。
  • 針:クエ針やタマン針の20号以上。餌の大きさに合わせて選びます。
  • オモリと捨て糸:オモリは潮の流れに応じて20〜40号を使い分けます。根掛かりした際にオモリだけが切れるように、本体のラインより細い「捨て糸」(ナイロン5〜8号程度)でオモリを結ぶのが最大のコツです。

エサ:冷凍サバを基本に「現地の活きエサ」を狙え

エサの選択は釣果を大きく左右します。最も手に入りやすく、集魚効果も高いのが「冷凍サバ」です。一匹を丸ごと、もしくは半身にして針に付けます。匂いが強いため、遠くのクエにもアピールできます。イカの短冊なども実績の高いエサです。

しかし、もし可能であれば、特効薬となるのが「現地で釣った活きエサ」です。サビキ釣りなどで釣れたアジやイワシをそのままエサにすると、クエの反応が劇的に変わることがあります。弱ってヒラヒラと泳ぐ動きと匂いは、どんなエサにも勝る最高のアピールとなります。面倒でも、活きエサを確保する努力は釣果となって返ってくるでしょう。

堤防クエ釣りに最適な「捨てオモリ式ぶっこみ仕掛け」の図解。道糸からオモリまでの各パーツの名称と推奨号数が示されており、根掛かり対策の捨て糸の重要性が強調されている。

なぜ釣れない?堤防クエで初心者が陥る罠と対策

「ポイントもタックルも完璧なはずなのに、なぜか釣れない…」堤防クエに挑戦する多くの方が、この壁にぶつかります。しかし、その「釣れない」には必ず理由があります。ここでは、初心者が陥りがちな3つの罠と、それを乗り越えるための具体的な対策をお伝えします。

罠1:アタリがない – ポイントか?時合いか?

最も心が折れそうになるのが、竿先に何の反応もない時間が続くことです。この時、考えるべきは「ポイント選択が間違っているのか」それとも「まだ時合いではないのか」という二つの可能性です。

もし潮がほとんど動いていない時間帯であれば、状況が好転する潮変わりを待つという考え方もあります。クエの活性は潮の動きや時間帯などの影響を受けるとされるため、満潮・干潮の前後や潮が動き出すタイミングなど、変化が出やすい時間帯は重点的に試してみる価値があります。

罠2:アタリはあるが乗らない – 焦りは禁物「本アタリ」の見極め方

「コツ、コツ…」と竿先を揺らす小さなアタリ。ここで焦ってアワセを入れてしまうのが、よくある失敗です。これはクエが餌を咥えたり、少しずつかじったりしている「前アタリ」に過ぎません。

この前アタリでアワセても、針掛かりすることはほとんどありません。やるべきことはただ一つ、「待つ」ことです。クエが餌を完全に飲み込み、反転した瞬間に訪れる、竿先が海面に突き刺さるような強烈な「本アタリ」まで、じっと耐えるのです。この一瞬の見極めこそが、堤防クエ釣りの醍醐味。竿が満月のようにしなり、ドラグが悲鳴を上げるその瞬間まで、決して動じてはいけません。

罠3:掛けても獲れない – 根ズレとの戦いを制す

フッキングに成功し、強烈な引きを味わったのも束の間、急に軽くなる手応え…。根に潜られてのラインブレイクは、この釣りで最も悔しい幕切れです。これを防ぐには、ヒットした直後の数秒間がすべてを決めます。

クエを掛けたら、考えることは一つだけ。「全力で根から引き剥がす」こと。ドラグは締め気味に設定しておき、フッキングと同時にリールをゴリ巻きして、魚に主導権を一切与えません。相手がどれだけ大きくても、最初の突っ込みを耐え、海底から数メートルでも浮かせることができれば、キャッチ率は格段に上がります。万が一根に潜られてしまった場合は、一度ラインテンションを緩め、魚が油断して出てくるのを待つという最後の手段もありますが、基本は「先手必勝」です。

まとめ:堤防クエは、理論と観察で「幻」ではなくなる

この記事でお伝えしてきたように、堤防からのクエ釣りは決して運任せの釣りではありません。

  • クエの生態を理解し、なぜ堤防にいるのかを知ること。
  • 潮の流れや地形の変化を読み解き、論理的にポイントを選ぶこと。
  • 適切なタックルと仕掛けで、万全の準備をすること。
  • そして、釣れない時にこそ冷静に原因を分析し、次の一手につなげること。

これらを一つひとつ積み重ねていくことで、「幻」は着実に現実へと近づいてきます。大切なのは、諦めずに観察と試行錯誤を続ける心です。堤防という日常のすぐ隣にある非日常の舞台で、あなた自身の力で記念すべき一匹と出会える日が来ることを、心から願っています。

最後に、夜釣りは常に危険と隣り合わせです。必ずライフジャケットを着用し、足場の良い場所を選んで、安全第一で楽しんでください。このサイトが、あなたの挑戦の一助となれば幸いです。

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